ベースをまたぐ1

先日のグランド練習で、普段別のポジションを守る選手達へファーストに廻ってもらい、ショートからの送球を受けるという練習をしていました。
ノッカー役のヘッドコーチの意図は色々あった様です。その一つに、無我夢中でファーストに投げていた彼らにとって、どんな送球でも捕球をしなければならないファーストの大変さを説いておりました。さて、ファーストというポジションには、ランナーが1塁にいる時、ピッチャーから牽制球を受け、ランナーにタッチするという役割があります。拙の息子は、学童最終学年でファーストを守ることが多く、やり始めの頃はランナーがいる時の立ち方について、審判から指導を受けることがありました。
ご紹介する動画は、ランナーの松本哲也選手にスポッットが当たっているのですが、あえてファーストを守る新井貴浩選手の足元に注目してください。

「牽制球に備える時は、ベースをまたがない様に」というのは、審判講習会を通じて教わるのですが、野球規則ではピンポイントでこれを禁ずると書かれてはいません。
しかし、この部分を読むと納得ができます。

【公認野球規則5.02 『守備位置』】 (旧4.03『試合開始』)
試合開始のとき、または試合中ボールインプレーになるときは、キャッチャーを除くすべての野手はフェア地域にいなければならない。
(c)ピッチャーとキャッチャーを除く各野手はフェア地域ならばどこに位置しても差し支えない。
「注」ピッチャーがバッターに投球する前に、キャッチャー以外の野手がファウル地域に位置を占めることは本条で禁止されているが、これに違反した場合のペナルティはない。審判員がこのような事態を発見した場合には、速やかに警告してフェア地域に戻らせた上、競技を続行しなければならないが、もし警告の余裕がなくそのままプレイが行われた場合でも、この反則行為があったからといってすべての行為を無効としないでその反則行為によって守備側が利益を得たと認められたときだけ、そのプレイは無効とする。

ベースをまたぐ後ろ脚は右脚になりますが、何も知らない選手に「ベースをまたいで」とだけ伝えた場合、彼らの右脚はファールゾーンに位置するはずです。器用にフェアゾーンに置くこともできますが、ランナーの帰塁の時に邪魔なるだけでなく、ブロック(走塁妨害)したとみなされます。実際にやってみると判りますが、両脚をフェアゾーンに置いた状態で、牽制球を待つためにはキツい体制を強いられます。

後ろ脚となる右脚は、ピッチャー寄りのベース角に置く様にしましょう…

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珍しい守備妨害2

珍しい守備妨害をご紹介します。前回は、ランナーコーチャーにスポットを当てました。

珍しい守備妨害1

今回は、バントを試みたバッターとキャッチャーの接触についてです。
この動画では、左バッターのバントが小フライとなり、バッターボックスから近い場所にボールが落ちました。バッター自身は自らファールと判断して、バッターボックから出ていませんので、ランナーにはなっていません。しかし、小フライを捕りに行ったキャッチャーが、バッターとぶつかってしまいます。ルールに照らし合わせて、どちらが悪いのかを考えてみます。

解説者の説明に疑問を感じたので、野球規則から該当する箇所を取り上げてみます。

【公認野球規則6.01 (旧5.04)】 『妨害・オブストラクション・本塁での衝突プレイ』
(a)バッターまたはランナーの妨害
(10)ランナーが打球を処理しようとしている野手を避けなかったかあるいは送球を故意に妨げた場合。
ただし、2人以上の野手が接近して打球を処理しようとしており、ランナーがそのうち1人か2人以上の野手に接触したときには、審判員はそれらの野手のうちから本規則の適用を受けるのに最もふさわしい位置にあった野手を1人決定して、その野手に触れた場合に限ってアウトを宣告する。(5.09(b)(3)参照)
原注」キャッチャーが打球を処理しようとしているときにキャッチャーと1塁へ向かうバッターランナーとが接触した場合は、守備妨害も走塁妨害もなかったとみなされて何も宣告されない。打球を処理しようとしている野手による走塁妨害は非常に悪質で乱暴な場合にだけ宣告するべきである。例えば打球を処理しようとしているからといってランナーを故意につまずかせるようなことをすれば、オブストラクションが宣告される。キャッチャーが打球を処理しようとしているのに、他の野手(ピッチャーを含む)が1塁手、ピッチャーが1塁へ向かうバッターランナーを妨害したらオブストラクションが宣告されるべきで、バッターランナーには1塁が与えられる。
(11)野手(ピッチャーを含む)に触れていないフェアボールが、フェア地域でランナーに触れた場合。   「原注1」打球(フェアボールとファウルボールとの区別なく)を処理しようとしている野手の妨げになったと審判員によって認められたランナーは、それが故意であったか故意でなかったかの区別なくアウトになる。
しかし、正規に占有を許された塁についていたランナーが、フェア地域とファウル地域との区別なく守備の妨げになった場合、審判員がその妨害を故意と判断したときを除いて、そのランナーはアウトにはならない。審判員が、その妨害を故意と宣告した場合には次のペナルティを科す。
無死または1死のときは、そのランナーとバッターとにアウトを、2死後のときはバッターにアウトを宣告する。

主審の判断は、(11)の「原注1」を適用したと考えられます。バントを失敗したバッターが1塁へ走りだす仕草を見せていたら、(10)を適用し守備妨害を取る事はなかったでしょう。この場面において、主審はバッターが自らファールと判断して、バッターボックスに留まった事を問題視したと推察します。学童野球でもランナーを進めるためのバントは多用されています。バントの上手い選手ほど打球を殺せるため、主審は動画の様な小フライがキャッチャーの守備範囲内かどうかを冷静に判断する必要がありますね。

バッターも、ファールかフェアかを勝手に判断しまわない事です…

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