徹底的な土台作り1

拙が通勤途中に読んでいるネット記事の一つに、”sportiva(スポルティーバ)“というサイトがあります。先週末、「人生をかえたスポーツ漫画」というテーマで、MLBを含む現役プロ野球選手100人を対象にしたアンケート結果が掲載されていました。全員が全員、野球漫画に夢中になったのではなく、「スラムダンク」などの他の球技を題材にした漫画を好んだ選手もいて、なぜだか少し安心しました。
ただ、ある選手のコメントがすごく気になり、今回ここで取り上げます。正直、最初目にしたときは編集記者の誤記かと思った程です。

「僕は漫画大好きですよ。スポーツ漫画ですか? 影響を受けたのは『タッチ』ですね。その中で、上杉達也がアメリカで投げる『タッチ CROSS ROAD~風のゆくえ』というテレビ映画があったんです。見たのは中学生の時で、その頃、僕はピッチャーをあきらめていたんです。遠投は50メートルもいかないし、球速も80キロぐらいでしたから。バッティングは良かったので、打者としてやっていこうかなと。そんな時に見たのがタッチの映画だったんです。上杉達也はもともと真っすぐだけで、変化球は投げなかったのに、ピッチャーとしてアメリカで成功するためにフォークボールを覚えるんです。そういうピッチャーに対する一途な思いに感動して、もう一度ピッチャーをやろうと決めたんです。あれを見たおかげで、今の自分があるかもしれないですね」

これは、西武ライオンズ高橋朋己投手が懐述したコメントなのですが、なにか気が付きませんか?
「遠投は50メートルもいかないし、球速も80キロぐらい」というくだりです。しかも中学生… 遠投の距離といい、球速といい、実は小学4~5年生クラスの実力なのです。一説には、学年(小学生の場合)×10mが一般的な遠投距離だそうですから、ここで仮に「中学1年生の時の記録」として読み直しても、学童野球を経験してきた選手の運動能力としては平均以下だと想像します。
2012年ドラフト会議で、西濃運輸から埼玉西武ライオンズに4位指名を受け入団した高橋投手は、翌年ドラフト指名前から抱えていた左肩の不安・リハビリによりシーズン中盤まではファーム(2軍)での登板もなかったそうです。しかし、不安が癒えた後に数週間で一軍に昇格すると、ストレートの球威と高い奪三振率を武器に貴重な左の中継ぎとして活躍し、同年のレギュラーシーズン最終戦ではプロ初勝利を挙げました。
シーズン開幕前には、解説者の工藤元投手が今年のイチ押し選手として、彼を取り上げておりました。

遠投は50メートルもいかないし、球速も80キロぐらいというコメントは、実際本当らしいです。彼の球歴は、「小学2年から野球を始め、中学時代は三島田方シニアに所属した」となっていますので、恐らく中学で硬式に転向したのでは?と想像します。高校入学時点で、まだ98km程度だった球速は、高校3年生でようやく129kmに達します。高校時代は、故障の影響もありエースにはなれず、所属チームとしても静岡県予選3回戦で5回コールド負けを喫したため、甲子園出場経験はありません。しかし、大学野球に向けて練習していた際に、当時の監督から腹筋・背筋を鍛えるために暖房用の薪割りを薦められ、2~3時間の作業を毎日続けたことで彼の人生は一変します。この筋力トレーニングが着実に実を結び、大学2年生の秋にベストナイン、3年生の春に最優秀投手賞を受賞。大学卒業後は西濃運輸に入社し、1年目となる2011年の春から公式戦に登板するまでに成長しました。プロ入り後は、サイドスローに近いスリークォーターから平均球速143km、最速149kmのストレートを武器に、2014年シーズンでは開幕から中継ぎとして登板し、配置転換からクローザーに抜擢されるまでに飛躍を遂げています。

中学時代の記録から察すると、小学生時代は少なくとも「野球で注目される選手ではなかった」はずです。また、学童時代に所属したチームに多くの同級生がいて、そこそこの強さであったならば、最高学年になってもレギュラーの当確ラインを彷徨い、決して思うような活躍ができる選手ではなかったと想像します。しかし、プロの世界に辿り付けたのは、野球を続ける気持ちが人一倍強かったこと、薪割りトレーニングを徹底的に実践したことが大きかったのでしょう。

以前、

走と投(Part1)

で一度触れましたが、学童(小学生)や中学野球では、食事の摂取量や成長スピードの違いがあり、どうしても身体能力的な差が付きまとう時期です。高校生までに突出した成績を残せなくても、取り組み方次第でプロ野球選手になれることを、高橋投手が証明してみせてくれました。

学童野球チームに所属していても、「最高学年になれば、いつでも試合に出られる」保証はありません。お勉強も同様に、塾に通いさえすれば、「志望する私立中学に合格できる」保証はありません。少なくとも、決められた枠よりも多い人数が集まれば、その中から競争に勝ち残るための努力は、やはり求められてしまいます。小学生であっても、何らかの目標を立てたら、そこへ向けた日々の努力の大切さを、まず学ぶ必要があると個人的には考えます。何かに取り組み始めた小学生自身と周囲の大人は、できるだけ短期間に成長の実感を求めたり、運動神経の良し悪しで限界を決めつけてしまったり、子供の能力をつい周囲と比較して一喜一憂してしまいがちですが、「ゴール(目標)をいくつ達成したか」よりも、「どれだけ徹底して取り組めるか」を大切にするべきかなと改めて感じました。体作りに薪割りが良いのかはともかく、毎日2~3時間といえば、平日の部活に費やす時間と変わりませんから、彼は自分の将来のために、あえて野球から離れ、集中的にかつ徹底的に体を鍛えたのでしょうね。一人黙々とこなすという作業って、野球に限らず他のスポーツだったり、勉強にも通じるところがあります。

あ~、もう一度小学生の頃に戻りたいなぁ…

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モノマネと肌感覚

「人のまね(モノマネ)をすることで、必要と言われている動きの理解が得やすい」というテーマで、下記の動画が構成されています。動画で古田氏が説明している内容やテクニックは、理論(解釈)の一つということで捉えて下さい。

さて今回は、「まねてみよう」という気持ちが、実はすごく大事だということを書きます。
例えばですが、ある選手の動きをまねて(模倣し)てみせるには、まず第一に目で観察しながら特徴を見つけること、そして実際に体を動かして確認する必要があります。どんなスポーツも初めて携わるときは、まずそれに近い動き目からの情報として仕入れて、何となく模倣することからスタートします。指導する側も、「こうやって…」と言いながら実演してみせますよね?しかし、模倣できているかどうかを本人が確認に加え、「似てる・似てない」の判断は、鏡や第三者が撮影した映像に頼るしかなく、どうしても視覚情報だけに偏ってしまいます。
監督からの提案で、夏合宿初日の夜のミーティングで少し話す時間を戴きました。そこで、選手達に提案をしたのは、映像だけの視覚情報だけでなく、もっと肌感覚を養ってみないか?ということでした。アンダーシャツや練習パンツ、靴下がどの様に肌に触れていくのか、それを沢山記憶しておくと、フォームという動きを自分自身で修正できるようになりますし、教わった新しい動きも速く吸収できるよと伝えていました。

肌感覚を養う手っ取り早い方法は、目をつぶって動いてみることです…

小学生時代の拙は、お受験で実際に野球をやれる環境にはなかったため(涙)、TV中継を観てはCM中に自宅の窓際に移動して、投げ方や打ち方をまねて遊んでいました。ここまで、足を上げないといけない」とか「手とバットは、こう動かして」などとブツブツ独り言を発していた様で、塾が休みの日にはゴムボールとプラバットを使って、友達と公園野球に勤しんだ記憶があります。
形を覚える近道として、模倣することは大事なのですが、それだけ続けてても大きい当たりを打てたり、早いボールを投げられるわけではありません。野球は、改めて「ボールを使った球技」だということを証明してくれる映像がこちらです。

細かな動きはさすがプロの芸人だなと感じますが、実際のプレーには「動くための様々なタイミング」が伴いますので、やはりボールを使った練習が必要だと言うことですね。

プレー上達への近道を考えるとすれば、できれば動きの確認を平日に、ボールを沢山使うのは週末のグランドで行うということになるのかな?

まぁ、拙の独り言なんですけどね…

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