暗黙のルール

メジャー・リーグでは、アンリトン・ルール(unwritten rules:ルールブックに書かれていないルール)と言われる暗黙の不文律(ルール)があるらしいです。例えば、派手なガッツポーズをしないとか、大差のついた試合でカウント3-0(3ボールノーストライク)から打たないとか、いずれも「モラルある行動」と表現し、大差のついたゲームの終盤でのバントや盗塁なども禁じているそうです。もし、それを無視して盗塁に成功しても、公式記録とならずに報復の死球が発生するのだとか。近年では、日本のプロ野球でもメジャーの影響を受けてなのか、この「暗黙のルール」の浸透が進み、しばしばトラブルとなるプレーがあったと言われています。

現在、甲子園では夏の高校野球が行われているのですが、どうもこの「暗黙のルール」を持ち出して、ネット上での書き込みやマスコミの論調が目に付きます。そもそも、プロ野球との決定的な違いは、高校野球の試合はトーナメント戦であり、負けてしまったら、その大会中のリベンジは果たせません。
例えば、「走るだけでは機動力。相手を嫌がらせるのが『破壊』」を意味する「機動破壊」をスローガンに持つ、群馬代表の健大高崎は、利府戦で計11盗塁を記録し、結果10-0で勝つのですが、8-0で迎えた8回2死からランナーが出塁すると、迷うことなく盗塁を決めてきました。

実際、大差のついた場面での盗塁に対して批判めいたコメントを目にしました。しかしですよ、健大高崎は地区予選で昨年の覇者である前橋育英を相手に、7回2アウトから6点をもぎとり、その後群馬県代表となって甲子園の切符を手にしました。

茨城代表の藤代は、1回戦の大垣日大戦で、初回に8点を奪いながらも、終盤ひっくり返されしまい10-12で敗退しました。高校野球においては、「終盤5点差以上」というセーフティリードが、あるようでないのが実際のところだと思います。

健大高崎が取り組んだ走塁は、勝ち抜くために選択した戦術です。「走る野球にスランプなし」という格言がある通り、甲子園では強豪相手にも怯まず、3回戦までに22盗塁を記録しました。つい先日、選手に走塁を教えたコーチのインタビュー記事を読んだのですが、興味深いコメントがありました。「走ればセーフになるという流れが一度できると、誰が走ってもセーフになっちゃう。相手もあきらめてきますからね。一度、50m8秒台の選手が三盗を成功させたこともありますが、そういう感じになってくるんです」だそうです。積み重ねた研究と練習の賜物があってこそですが、結局最後はメンタルなんだなと感じた次第です。

まぁ、拙の独り言なんですけどね…

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完全捕球の定義1

週末の台風による影響で、夏の甲子園本大会は2日遅れで開幕しました。今回は、本大会2日目に登場する愛知県代表の東邦高校が、地区予選中に遭遇した珍しいシーンを紹介します。ネット上でも、ちょっとした騒ぎになった様です。愛知大会準決勝戦、対豊田西戦において、東邦が3-1で迎えた7回2死一、二塁の場面です。東邦の打者が放った打球を、豊田西のセンターが一度グラブに収めたのですが、ボールを持ちかえようとしたのか、その後グラブからボールがこぼれてしまいます。0分14秒あたりです。

豊田西の守備陣は、3アウトを信じて、捕球したセンターを含めてベンチに戻ります。対する東邦の走者も攻守交代のために、ベンチに戻りかけるのですが、三塁ランナーコーチから「走れ、走れ」の声があったそうです。ボールを落としたことを目視した1塁塁審が両手を大きく広げてセーフのポーズをします(1分1秒あたり)。完全に捕球したという判断を下さなかったのです。これにより、塁上にいた2人に加え、センターフライを放った打者も生還して3得点が認められました。このシーンですが、ランナーが一、二塁にいるため、捕球のジャッジは1塁塁審が行います。

公認野球規則(2・15)から、部分的に抜粋しますと…

野手がボールを受け止めた後、これに続く送球動作に移ってからボールを落とした場合は、捕球と判定される。要するに、野手がボールを手にした後、ボールを確実につかみ、かつ、意識してボールを手放したことが明らかであれば、これを落とした場合でも捕球と判定される

「グラブにボールが収まってから、何秒経過すれば完全捕球か?」という規定は存在しません。非常に曖昧なところですが、外野フライの場合、塁審が「キャッチ」とコールするか、ボールをしっかり持ちかえたことをアピールすれば、完全捕球と判断されるのです。
ですから、このシーンにおいては落球と取られても仕方ないですね。右手(投げ手)に”持ち替えて”から返球動作の時に落とせば、完全捕球と認められますが、一旦捕球したものの右手に移る前にボールが落下しています。2アウトですから、捕球後に内野にすぐ返球する必要はありませんでした。「確実に捕球した」と明確なアピール(動作)をすれば、捕球と認められたと思います。

この様なプレーが、仮にダイビングキャッチだったとしても、捕球後の次の動作が認められないうちにボールがこぼれれば、セーフになってしまいます。プロ野球でも、こんなシーンがありました。0分7秒あたりです。

阪神の福留選手には気の毒ですが、このファインプレーにおいても完全捕球とは認められません。

落球と判断され、しかも終盤で3点を失った豊田西高ですが、一旦引き揚げたベンチから走って戻り、切り替えてプレーを続けたところは素晴らしいと感じました。

まぁ、拙の独り言なんですけどね…

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