補殺プレー(2)

今回は、広島カープ前田健(マエケン)投手を視察に来た、メージャーのスカウト達の目を釘付けにした選手を紹介します。

ネット記事はコチラ→マエケン視察の米スカウト釘付け 広島・菊池のポテンシャル(日刊ゲンダイ)
あるスカウトは「マエケン? そんなことより、キクチは何者なんだ?」と、こう言う。「あんなに守備範囲が広く、肩も強い日本人内野手は見たことがない。ファンタスティックな選手だ! 米国でも通用するかって…それはジョークかい? どの球団でも今すぐにレギュラーになれる。むしろ、キクチ以上の守備が出来る二塁手はメジャーにも5人といないだろう。キクチがFAを取るのはいつだ?  ヒロシマはポスティングで彼を出す気はあるのか?」

ヒロシマのキクチとは、菊池涼介選手(二塁手)のことです。171cmと野球選手としては小柄ながら長打力もあり、さらにスローイングの正確さも備えた内野手です。一歩目の動き出しが非常に速く、中日ドラゴンズの谷繁元信は「グラウンドに犬が走っている」と評したそうです。捕球から送球まで機敏なことから、12球団のスカウトからは「守りでプロの飯が食える」と言わしめ、さらにはプロ入り後、仁志敏久や宮本慎也といった名手から守備範囲の広さを賞賛されています。他の二塁手が追いつけない打球にも追いついてしまうため、エラー(失策)が記録されることも多いのですが、その広い守備範囲からネット上の一部では「野生児」「野人」と呼ばれています。その彼が、今年もトンデモナイ記録を樹立しました。それは、「2年連続500補殺以上」という数字です。野球ニュースで取り上げられる記録には、最多安打やホームラン王、最多勝にセーブ数などがありますが、500補殺という項目は大きく扱われません。単純計算で、1試合に4つ以上のアウトに絡んでいることになります。「セカンドゴロが4つあっただけじゃん」という感想で終わらせないで下さい。日本記録は、昨年菊池選手自らが樹立した528なのですが、9月30日のヤクルト戦でその記録を塗り替えてしまいました。

彼の守備をみると、「どこまでもボールを追いかけ、アウトにしようとする」その凄さに驚かされます。それでは、彼のプレーをご堪能ください。


以前このBlogでも触れましたが、宮本選手も「二塁手は強肩な方がよい」と言っておりました。あの守備範囲があっての補殺数樹立には、強肩があってこそだと納得してしまいました。

200本安打で表彰されるのなら、500補殺でも堂々表彰される価値があると感じたのは、拙だけでしょうか…

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補殺プレー(1)

補殺という言葉をご存知でしょうか?試合においてアウトが成立した場合、これに至る過程で、送球を行ったり、あるいは打球や送球の方向や速度を変えるなどしてそのアウト成立を補助すること、もしくはその野手に記録される守備記録を意味します。サッカーでいう、「アシスト」に似ています。
捕殺と書かないの?」と聞かれそうですが、「アウトを捕る(とる)」のではなく「アウトを補う(おぎなう)」ことから「補」いう字を用います。
では、補殺がアシストならば、直接アウトを奪った野手はどういう記録が付くのでしょうか? 打者や走者がアウトになった時には、触球や打球の捕球などにより直接アウトを奪った野手には刺殺が記録されます。

今回は、2回に分けて、捕殺となるプレーついて学んでみます。
「補殺」が記録されるケースは、次のようなプレーが起きた時です。代表例をいくつか記載してみます。

1. ショートがゴロを捕り、ファーストへ送球して打者がアウト
  →ショートに補殺が記録されます
2.キャッチャーが二塁へ送球し、セカンドが盗塁を試みた一塁走者に触球(タッグ)してアウト →この捕手に補殺が記録されます
3.タッチアップが失敗した場合
  (フライの捕球(外野手)を見て三塁走者が本塁に向かった時、外野手が本塁へ送球し捕手の触球によりアウトになった場合)

  →飛球を捕球し送球した選手に補殺が記録されます
  →中継プレーに参加した内野がいた場合は、フライを捕球し送球した選手と中継プレーに参加した選手の両方に補殺が記録されます

4.振り逃げが成立した後、キャッチャーが一塁へ送球し,打者走者がアウトとなった
  →捕手に補殺が記録されます

チーム内で試合結果の集計に使用しているサイトでは、補殺刺殺の入力や記録ができない仕組みになっているのですが、スコアブックではどの様にしてアウトにしたかという記録は必ず残しています。ここで、補殺の総計である補殺数に着目すると、各ポジション別に選手達の守備能力を比較することができます。当然の事ながら、攻撃の記録における打席や打率と一緒で、守備についたイニング数が多いほど補殺数が多くなる傾向にありますので、守備イニング数とセットで補殺数を比較しなければ、総合的な判断できません。

投手の場合:打球を処理する機会が少ないですが、補殺数が多ければバント処理などのフィールディングが良いと見ることができます
捕手の場合:おもにインフィールドのゴロの処理と盗塁阻止を足した数字となるため、補殺が多ければ、フィールディングがいいかまたは盗塁を阻止する能力に長けていると判断できます
内野手の場合:内野手の補殺は、ゴロを捕球して送球するという基本的なプレーに対して記録されることが多いので、守備範囲の広さをはじめとした総合的な守備能力をみることができます
外野手の場合:補殺はおもに内野返球により走者をアウトへ導く行為となりますが、外野手の補殺数は内野への正確な送球やその肩の強さに比例して増えない、という問題点があります。

理由は、一度その外野手が強肩を披露すると、相手走者はその外野手の送球能力(レーザービーム)を警戒し、余分な塁を奪いにいく姿勢に躊躇することが増えるからだと考えられています。そういう意味では、捕手も一緒ですよね? 近年では、「外野手が相手走者の余分な進塁を抑止したこと」を数値化する試みも行われているそうです。
それでは最後に、外野手における補殺の一例をご紹介します。学童野球でよくお目に掛かる「ライトゴロ」です。

守備位置の兼ね合いから、ライトへの飛球やゴロがアウトになりやすい傾向にあります。その一方で、プロ野球の世界では逆に珍しいプレーと言われています。

次回は、驚くべき補殺数を誇る内野手を紹介します…

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