登板間隔

現在のプロ野球の先発投手は「中x日」登板間隔を空けてマウンドに上がります。ここ最近は、中6日が主流になっている様です。この流れを作ったのは、ロッテ(現千葉ロッテ)の村田兆治投手がトミー・ジョン手術を受けて復帰後、中6日の先発で開幕11連勝を果たし、その後数年に渡って活躍の後、名球会入りした印象が強いからという一説があります。つまり、彼が成功の前例となり、一般的になったということです。今の小学生選手達に、村田投手といってもピンとこないと思いますので、懐かしの勇士をご覧下さい。

さて、今回は中日ドラゴンズの吉見一起投手を取り上げます。彼は、一昨年6月4日にトミー・ジョン手術を受けました。この手術は、肘の靱帯断裂に対する手術術式のことで、1974年フランク・ジョーブ氏によって考案され、初めてこの手術を受けた投手トミー・ジョンにちなんでこう呼ばれている。実践復帰率は97%といわれているものの、復帰まで1年掛かります。実際、吉見投手は昨年夏に一度は復帰しましたが、違和感を覚えて離脱したため、わずか試合のみでシーズンを終えました。
無理をさせられない状態であったとは言え、今シーズンは中6日での先発ローテーションが組まれると予想されていました。この中6日というのは、ダルビッシュ投手も大リーグの中4日先発制に対して、短すぎると異議を唱え、中6日が理想という意見を表明したように、先発した投手が肘や肩に抱えた炎症から回復するためには、ある程度の期間が必要と言われた目安です。しかし、今シーズンの吉見投手は登板毎に1軍登録を抹消され、最短で再登録が可能な中10日を選択しています。こうした思い切ったローテーションには、落合GMと森ヘッドコーチの意向が働いているのかもしれません。それにしても、この2年間で1勝しかしていない投手に対して、特別扱いと揶揄する人も出て来そうですよね?そこで、彼の成績を調べてみました。

吉見投手の球歴

吉見投手は、ローテーション入りした2008年から故障前年の2012年まで5年間で69勝26敗の成績を残しています。1年間あたりに換算すると14勝5敗です。これだけ毎年安定して成績を残せる投手はほんの数人ですから、通常のローテーションを崩してでも、大事に起用する価値のある選手ということ、さらに負けの数が少ないので貯金の作れる投手だと判ります。さて、下記の動画をご覧下さい。

手術を経て、内に秘めていた思いは過去の自分への決別だったそうです。鳥取ワールドウィング(トレーニング施設)、自主トレ、スパイク、フォーム、変えられる事は全て変えましたねと語る通り、これからの自分を作る作業を模索したそうです。
今シーズン終盤、この登板間隔に変化が生じるのかは興味がある一方で、無事にシーズンを乗り切って復活を遂げた時、彼の登板間隔は次の時代のスタンダードになっていくかもしれません。近い将来、学童野球においても公式戦で登板するピッチャーに対し、イニング制限に加えて、球数制限も課してくると想像します。彼らの試合は週末ですから、最低中5日となりますが、トーナメントの消化具合によって週末の2日間で連投するケースもあり得ます。大会が目白押しのこの時期は、その殆どがプロ野球とは異なるトーナメント戦です。チームの監督さんは、1日でも長い大会を目指しつつ、球数を気にしながらピッチャーのやり繰りをします。小学生選手を待つ先の大事な未来のために、「周りには気が付かれ難い」苦労が続きます。

まぁ、拙の独り言なんですけどね…

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スカウトの決断力

今回は、日本ハム中島卓也選手を取り上げます。福岡工業高では1番ショートとして活躍し、2008年春の九州大会でエースの三嶋一輝投手(現横浜DeNA)らと共にチームを初優勝に導きました。高校時代は評価は高いとは言えず、調査書はわずか球団から届いただけでしたが、その1球団とは北海道日本ハムファイターズでした。2008年のプロ野球ドラフト会議で位指名を受けます。6年目の2014年、中島選手は前年の打率.238を.259に上げ、盗塁も23から28盗塁に増やし、フィールディングも定評がありセカンドのレギュラーを手中に納めました。彼を特集した番組はコチラです。

中島選手を発掘したのは、当時日本ハムで九州地区を担当していた岩井スカウトです。元々、三嶋投手と対戦相手である長崎・清峰高の今村猛投手(現広島カープ)の視察が目的だったそうです。「三嶋のシュートに詰まって、ショートゴロが7つも8つも飛ぶ。それを右に左にすばしっこく動いて、全部さばいてね。うまいなぁ……と思った。特に、スローイングが良かった。ガッて強く投げない。ソフトにスナップですっと投げられる。ヤクルトにいた宮本慎也がそうでしょ。ああいうショートがほんとにうまいんだ」と当時を振り返ります。その試合が終わり、岩井スカウトはすぐに席を立ちます。

「ちょっと、お母さん見てくる」

男の子の将来には、お母さんの特徴が出るというのは以前も触れました。

「科学的にどうなのかはわからないが、ここまでたくさんの人と出会ってきた経験則」として信じているそうで、その感想は「思った通り。体格がよくて明るくて、元気のよさそうなお母さん。本人がすぐそこで顔を洗ってたから、そばで比べたら、僕が175だから身長も176はあるな……」

加えて、「まだどこも狙ってない。僕の隠し玉だから」と同行した記者に微笑み、早速球団には「守備は間違いなし。守備だけなら3、4年で出てきます。バッティングは確かに非力だけど、悪い打ち方してるわけじゃない。筋トレとプロの食事でどうにでもなる。盗塁できるスピードと感性も持っている。パワーさえつけば、レギュラーになれる子ですよって。6、7年かかるかもしれませんけどってね」と報告したのだそうです。

高校の監督さえ、あまりの非力さに腰を引いたほどだった中島選手の高校時代。それでも、フィールディングなら高校ナンバーワンなのだから……、と口説いて日本ハム入りを実現させたスカウトのイメージ通りに、プロ年目で代走と守備固め中心に105試合出場を果たしました。そして年目の昨シーズン、セカンドしてレギュラーの座を獲得します。

最後に岩井スカウトの言葉が印象に残りました。
「ほかの世界は知りませんが、プロ野球で選手が成長していくのに特別な理由なんてありませんよ。練習すること、良い練習をしようとする心。それだけですよ。まぁ、もし中島に何かちょっと人と違うことがあったとすれば、あいつをなんとかしてやろうっていう空気を球団全体に作ったことかなぁ……。それにしても、あいつの日ごろの練習態度、生活態度がそういうムードを生んだってことなんですけどね」

プロを夢見る小学生選手達には、どんな練習メニューだろうと、意味は持たせられる選手になってほしいですね。学童レベルでは、やらされている練習ばかりでしょう。これが中学以降になれば、知識も豊富になり、その練習に意味があるかないかを自己判断できる様になるのでしょうか?練習する時間が誰も皆同じだとすれば、そんな判断力よりもどんな練習からでも何かを手に入れられる力が、その先大きな差になっていく気がします。

まぁ、拙の独り言なんですけどね…

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