捕手のとおせんぼ

捕手が本塁をブロックで死守し、走者が無理を承知でそこに体当たりで突入する、MLBで観られるこのホームベース上でのクロスプレーに疑問を呈する事が急増しているそうです、特に、先シーズンでは新聞紙上でも「マッチョ・ナンセンス」という単語を用いて、「この激突は、単なる体当たりでしかなく、格闘技と変わらないじゃないか?」と警鐘を鳴らした結果、2014年シーズンから、「捕手のとおせんぼ」が禁止されることになるかも知れないのです。1月中に行われるMLBオーナー会議や、そのあとの選手会協議でもこの改正案はたぶん通過するのではと言われています。

野球は球技ですが、使われるボールそのものが凶器に等しい競技は、なかなか他に見当たらないと思います。アメフトやラグビーと異なり、野球は肉体の直接的コンタクトを前提としていないため、飛球を追った野手のごっつんこの様に、「偶然の衝突」しか想定されていません。
ところがです。本塁をブロックする捕手は否応なく激突の危険にさらされています。まず、返送されてくるボールに神経気を集中させているため、砲弾のように突っ込んでくる走者に対して体勢を整えるのは、非常に困難です。捕手が身に付けるプロテクターは、時速150キロ以上で投げ込まれるボールやファウルボールから身を守るためのものです。つまり、体重100キロを超える大男が、全力で突入してくるのを防ぐ事を想定して作られてはいません。その証拠に、捕手の怪我人はあとを絶ちません。

それにしても、「捕手のとおせんぼ=本塁ブロック」というプレーが、なぜこんなに長続きしたのかは、もう少し歴史的な背景を調べる必要があります。大昔の野球では、球を走者にぶつければアウトにすることができたとか、やすりをかけたスパイクで相手の胸に飛び蹴りを食わす行為も認められてた時代があったそうです。そもそも、アメリカにおけるアマチュア野球(高校や大学)では、本塁ブロックは一貫して禁じられていますし、この行為は「走塁妨害」の一種と考えられなくもありません。

捕手が捕球するまでは進路を開け、そのあとはタッチプレーとスライディングのせめぎ合いで勝負をつけるというシーンは、スリルがあると思うんですけどね…

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