駆け抜けへの誤解

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MLBシーズン公式戦の最終試合で、珍しいプレーが起こりました。
エンゼルス本拠地で行われたブルワーズ戦、4回表先頭打者のブルワーズのマット・ギャメル選手が放った当たりは、エンゼルスでショートを守るアンドレルトン・シモンズ選手の方へ転がり、逆シングルで捕ってすかさず一塁へ送球します。しかり、鋭い送球はやや短く、ファーストを守るクリストファー・ジョン・クロン選手の手前でバウンドし、1塁ファウルゾーンへ勢いよく抜けてしまいました。それとほぼ同じタイミングで1塁ベースを駆け抜けたギャメル選手は一度はセーフになったのですが、喜びも束の間、なんとシモンズ選手の悪送球がファウルゾーンの側壁にぶつかった後、真っ直ぐそのまま1塁ベースへ戻ってきます。これをグラブで拾い上げたクロン選手は、ギャメル選手をタッグし、あえなくアウトを宣告されました。

では、なぜアウトになったのか?

それは、ギャメル選手が1塁ベースを駆け抜けた際、ファウルゾーンではなくフェアゾーンに駆け抜けた事、悪送球になった事を知ったランナーの仕草が1塁塁審には2塁への進塁意思があると映ったと理解します。実際のプレーをご覧ください。

1塁ベースを駆け抜けたあと、再びベースに戻るまでにファーストにタッグされてアウトとなる場合、以下の状況が伴う必要がある事を理解して下さい。

− 1度ベースを駆け抜けたあとに、ランナーが少しでも2塁に行くそぶりを見せた場合

が重要なキーワードとなります。
では、学童野球でも起こり得るプレイをご想像ください。
内野ゴロで1塁を駆け抜けた時、ファーストがボールを弾いてセーフになったとします。ファーストがボールを拾っている間に、ランナーは2塁へ行こうと1歩だけスタートを切りますが、すぐにボールを拾い上げたので、2塁に行くのを止めて1塁ベースへ戻るというシチュエーションです。

べースに戻るまでにファーストにタッグされるとアウトになる事から、多くの指導者は駆け抜けという言葉を用いて、ファールゾーンへの走り抜けをまず教えます。この指導自体に間違いはありませんが、それだけでは不十分なのです。
問題は、1塁でセーフとなったバッターランナーはどこへ駆け抜けるのが正しいかを、ルールに沿って理解しないと大きな誤解を招きます。先日実施した、低学年選手と父兄対象のルール講習会で触れた際も、意外な反応がありましたので、野球規則を用いて一度整理してみます。

【公認野球規則本規則における用語の定義A〜D 『57.OCERSLIDE or OVERSLIDING「オーバースライド」』】(旧2.57)
攻撃側プレーヤーが、滑り込みの余勢のために塁から離れて、アウトにされる恐れのある状態におけれる行為をいう。本塁から一塁に進む場合には、直ちに帰ることを条件として、滑り込みの余勢のために塁を離れることは許されている
【公認野球規則5.09 『アウト』】(旧7.08)
(a)走者アウト
(11)走者が一塁をオーバーランまたはオーバースライドした後、直ちに一塁に帰塁しなかった場合。
一塁をオーバーランまたはオーバースライドした走者が、二塁へ進もうとする行為を示せば、触球されればアウトになる。また一塁をオーバーランまたはオーバースライドした走者が、直ちに帰塁しないで、ダッグアウトまたは自己の守備位置に行こうとした場合も、野手が走者または塁に触球してアピールすればアウトとなる。
【原注】
2アウト後、一塁に触れてオーバーランしたが、審判員によって〝セーフ〟の宣告を受けた打者走者は、5.08aを適用する上では、〝一塁に達した〟ことになり、〝ただちに〟一塁に帰塁しなかったために第三アウトになっても、このプレイ中にアウトより先に本塁に達していた走者は、得点として認められる。

この様に野球規則では、ランナーがファールラインの外側(ファールグラウンド)、もしくはファールラインの内側(フェアグラウンド)のどちらに居るべきかの文言はありませんから、駆け抜けるラインはどちらでも構わないという解釈になります。1塁塁審に求められるのは、ランナーが駆け抜けた先(居た場所)ではなく、2塁へ向かおうとする行為があったかどうかを観察しなければならないという事です。
その辺をわかり易くまとめた動画をご紹介します。

駆け抜けるライン(コース)を正しく指導できれば、1塁ベース上での接触による怪我を防げますし、バッターランナーの行為を観察していれば、ルールの誤解釈も未然に防げます。

審判に加えてベンチ入りを経験して感じたのは、低学年を指導する大人程、ルールを誤解している割合が多い事でした。技術指導や選手への教育は確かに重労働ですが、ルールへは思い込みで選手達に伝えていないか、確認してほしいと思います。

まぁ、拙の独り言なんですけどね…

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