ちょっとした思いやり

試合中において、バッターとキャッチャーは、いわゆる敵同士の関係になります。主審で彼らの真後ろに立つとよく判るのですが、学童野球で互いに目を合わしたり、会話する光景は皆無です。しかし、グランドから少し遠いところでは、仲良く話す光景を見かけます。彼らなりに、「試合=真剣勝負」体現しているんだと感じます。

さて試合では、こんなシーンが常に起こります。

– キャッチャーは、自分の近くにフライが上がった場合、キャッチャーマスクを放り投げてボールを追い掛ける。
– バッターは、ボールをバットで捉えた後、どんな当たりだろうと、バットを放り投げて1塁に向かって走り出す。

そのいずれのプレーの結果がファールと判定された場合、その勝負は継続となります。ここで、ちょっと想像してみてください。次なる勝負を前にして、もし自分の足元近くに敵の道具が落ちていたら、どの様な行動を取る選手を期待しますか?

以前、”夏の甲子園と凡時徹底“という投稿で取り上げた2013年夏の甲子園決勝戦。9回表の攻撃中に見られたワンシーンです。こちらの動画、再掲載します。(7分20秒あたりです)

残念ながら、この試合からすでに1年が経過し、伝えたい様子が写っている動画は少なくなりました。掲載した動画は、TV中継の録画ではないため見えずらいアングルなのですが、ホームベース付近での出来事に是非注目して下さい。コールドスプレーを持った1塁コーチャーが、相手チームのキャッチャーの腕に当たったファールチップを治療しに、ホームベースに誰よりも早く向かいます。その時、キャッチャーはうずくまりながらグラブとマスクをその場に置くのですが、敵チームの打者はそれを手に持ち、キャッチャーの回復を待って最後に直接手渡します。この試合では、そうした相手を思いやる姿勢が随所に表れていました。

打者がキャッチャーのマスクを拾う、あるいはキャッチャーがバットを拾う。

甲子園、それも決勝戦の舞台の緊迫した場面で、この所作を怠らない両校の選手に対して、野球以外の底力を感じずにはいられません。

フォルコンズの選手は、どうでしょうか?”OM Pictures“では再生時間の都合もあり、投手が1球投じた後に起続くホーム付近での出来事は、ほとんどカットされているため、残念ながら動画上での再確認はできません。
秋季大会を戦い抜いた選抜メンバーは皆、挨拶をしてからバッターボックスに入る様になりました。しかし、敵の道具を拾ってさりげなく手渡す選手は、これまで2〜3名程。さらに、相手から手渡された時、帽子に手をやるなどの仕草で挨拶を交わす場面はあまり遭遇できておりません。これらの仕草が、今後全員に行き渡っていくことを願っております。

これからチームは、6年生を送り出す試合と、来期を見据えた練習試合の消化が始まります。試合経験の浅い選手も、これから出場する機会が増えると思います。試合やボールの行方をリアルタイムで見守る我々大人は、1プレー1プレーの良し悪しについつい目が行ってしまいがちです。でも、ホームベース付近で起こる、ちょっとした思いやりの行動に遭遇したら、「格好いい!」と一言言ってあげてください。何気ないことを自然とできる選手達が増えれば、おのずとチームワークは強固なものになり、また冷静に次の勝負へ挑むことができる様になります。

学童野球の公式戦は、そのほとんどがトーナメント戦です。勝ち続けないことには、その大会に最後まで参加することができません。どうしても倒したいチームと相対する試合であれば、敵として強く勝負を意識するのはごく自然なことです。でも、野球における真剣勝負とは、相手がいて初めて実現できる対戦であり、敵をその相手をないがしろにする行為は期待されていません。戦う相手選手と讃えあい、勝負すべき相手はまず「ボール」なんだということを、学年問わず学んでいってほしいものです。

まぁ、拙の独り言なんですけどね…

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