打順の誤り

高校野球は、各地域で甲子園の切符を目指し、熱戦が繰り広げられています。東東京大会では、関東第一と堀越学園の試合で、関東第一側が打順を誤り、相手からもアピールのないまま試合が進んでしまうという珍事があったそうです。
関東第一の6回の攻撃は本来、1番の斎藤未来也選手が先頭で打席に入らなければいけませんでした。ところが、2番打者である小林琢朗選手が打席に入って試合が再開してしまいました。

ここで、守備側の堀越側が誤りをアピールすれば、その打者に対してアウトが宣告されまるのですが、実際にはアピールがありませんでした。誤って打席に入った小林選手曰く、「おかしいと思ったけど、電光掲示も2番だったんで」と話したそうです。
実は、この前の回(5回)2アウトランナー1塁の場面で、1番を打つ斎藤選手の打席で、9番打者が二盗に失敗し、攻撃を終えました。この時、斎藤が捕手への守備妨害をとられました。公認野球規則では、打者が捕手の送球を妨害した場合、その打者がアウトとなります。

珍しい守備妨害4

公認野球規則を読み直してみます。

【公認野球規則6.03 『打者の反則行為』】 (旧6.06)
(a)打者の反則行為によるアウト
(3)打者がバッターボックスの外に出るか、あるいは何らかの動作によって、本塁での捕手のプレイ及び捕手の守備または送球を妨害した場合。しかし例外として、進塁しようとしていた走者がアウトになった場合、および得点しようとした走者が打者の妨害によってアウトの宣告を受けた場合は、打者はアウトにはならない。
【原注】 打者が捕手を妨害したとき、球審は妨害を宣告しなければならない。打者はアウトになりボールデッドとなる。妨害があったとき、走者は進塁できず、妨害発生の瞬間に占有していたと審判員が判断した塁に帰らなければならない。しかし、妨害されながらも捕手がプレイをして、アウトにしようとした走者がアウトになった場合には、現実には妨害がなかったものと考えられるべきで、その走者がアウトとなり、打者はアウトにはならない。その際、他の走者は、走者がアウトにされたら妨害はなかったものとするという規則によって、進塁も可能である。このような場合、規則違反が宣告されなかったようにプレイは続けられる。

当の斎藤選手も「妨害と言われたので、次の回は2番からと思った」様です。ただしこの試合で起こったプレイは、二盗失敗によってランナーがアウトとなったため、次の回は1番打者が改めて打席に入らないといけません。

【公認野球規則6.03 『打者の反則行為』】 (旧6.06)
(b)打順の誤り
(1)打順表に記載されている打者が、その番のときに打たないで、番でない打者(不正位打者)が打撃を完了した(走者となるか、アウトになった)後、相手方がこの誤りを発見してアピールすれば、正位打者はアウトを宣告される。
(2)不正位打者の打撃完了前ならば、正位打者は、不正位打者の得たストライク及びボールのカウントを受け継いで、これに代わって打撃につくことは差し支えない。
(3)不正位打者が打撃を完了したときに、守備側チームが〝投手の投球〟前に球審にアピールすれば、球審は、
(A)正位打者にアウトを宣告する。
(B)不正位打者の打球によるものか、または不正位打者が安打、失策、四死球、その他で、一塁に進んだことに起因した、すべての進塁及び得点を無効とする。
【注1】
(3)(5)(7)項でいう、〝投手の投球〟とは、投手が次に面した打者(いずれのチームの打者かを問わない)へ1球を投じた場合はもちろん、たとえ投球しなくても、その前にプレイをしたりプレイを企てた場合も含まれる。ただし、アピールのための送球などは、ここでいう〝プレイ〟に含まれない。
【注2】
不正位打者の打球によるものか、不正位打者が一塁に進んだことに起因した、すべての進塁及び得点を無効とするとあるが、進塁だけに限らず、不正位打者の打撃行為によるすべてのプレイを無効とする。すなわち、不正位打者の二ゴロで一塁走者が二塁でフォースアウトにされた後、アピールによって正位打者がアウトの宣告を受ければ、一塁走者のフォースアウトは取り消される。
(4)走者が、不正位打者の打撃中に盗塁、ボーク、暴投、捕逸などで進塁する事は正規の進塁とみなされる。
(5)不正位打者が打撃を完了した後、〝投手の投球〟前にアピールがなかった場合には、不正位打者は正位打者として認められ、試合はそのまま続けられる。
(6)正位打者が、打撃順の誤りを発見されてアウトの宣告を受けた場合には、その正位打者の次の打順の打者が正規の次打者となる。
(7)不正位打者が〝投手の投球〟前にアピールがなかったために、正位打者と認められた場合は、この正位化された不正位打者の次に位置する打者が正規の次打者となる。

野球規則では少々複雑な記載になっていますが、審判員が誤りに気づいても、攻撃側に対して注意はできません
打順の誤りに気付かなかった選手と攻撃側ベンチにも、ルールの解釈で誤解があったと感じますが、電光掲示板の表示を管理している運営本部にも責任の一端はありそうです。

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