意味ある先例

中日ドラゴンズの荒木雅博内野手2000本安打を達成しました。
達成した翌日、スポーツ紙には多くの評論家・現役選手からのメッセージが掲載されていたのですが、その中で落合元監督の手記は1つ上のステージを目指す選手達に参考になると感じました。

もともと身体能力が高くて体力があった。体力は練習すれば付くのは分かりきっているけど、それに耐えられる選手がどれだけいるか。何人もやらせたが、ほとんどが逃げた。ドラゴンズの内野手は。最後までやったのが荒木と井端と森野。若い子にやらせても誰一人できなかった。守りで億という金を稼いだ男。守備はある程度、答えに近づける。打撃には答えがない。荒木には「オレは答えを求めて守備をやる」というのがあった。それが偉い。守りはやればやるほどうまくなる。打撃はどんなに才能があっても、一度崩れたら元に戻らなくなる、というのはあるから。答えのないものを追わず、答えに近づけることを追いかけて、レギュラーを張る方が賢い。中日は一塁手の動きが悪かったから「こっち側(一、二塁間)は全部守れ」というのを実行したヤツだからな。二塁プラス、一塁の半分はカバーしていた。相手のヒットを捕った数を加えられれば、とうの昔に2000本行っているよ。

この言葉を踏まえて、荒木選手のインタビューをご覧ください。

落合氏が監督だった時代、井端弘和選手とセカンド・ショートをコンバートするという事が大きな話題になりました。守備の名手をあえてコンバートした大きな理由のひとつは、井端と荒木の守備に対する意識を高め、より高い目標を持ってもらう意図があったのだそうです。セカンドとショート、同じ内野のポジションでありながら、動きはまるで違います。頭ではわかっていても、体がいうことをきかない。体に染みついた慣れに苦しみながら、2010年、荒木は12球団で2番目に多い20個のエラーを記録しました。
それでも使い続ける監督が悪いと開き直ったところで、問題は何も解決しない事に気が付き、他球団の先輩だった宮本慎也氏に教えを請います。宮本氏は一言、「ボールの追い方を考えなさい」と伝えたそうです。
荒木選手曰く、

「セカンドの習性としてはボテボテのゴロを内野安打にしたくないんです。だから最初から前で守って打球を横に追っていく。それによって少々、送球の体勢が崩れてもファーストまでは近いから、何とかアウトにすることができる。ところがショートはそうはいかない。横に追っていってグラブに入れただけではファーストには間に合わない。ショートの場合、斜めから回り込むように打球を追い込んで、すぐにスローイングできる体勢をつくらなければいけないんです。
そのために一番、重要なのは足。足が使えなければショートは守れない。僕の送球が安定しなかったのも、足が使えていなかったのが原因です。
それを実践してみて、やっと落合さんが言っていたことが理解できました。〝あっ、監督が言っていたのは、これだったのか!〟と。落合さんは常々〝下半身を使え〟と言っていましたから・・・・・・」

落合氏は手記の中で、最後にこんな事を語っています。

守ることで生きてきた人間が、2000本打った。これは今後のプロ野球選手にも意味ある先例になったと思う。

体力が付いてきて身体も大きくなってきた時、どんなプレーヤーを目指すか、ドラゴンズファンでなくても、数ある目標の一選手に加えてほしいと感じました。
そう言えば、先日メジャーリーガーの青木宣親選手も日米通算2000本安打を達成しました。荒木選手とは全く異なるタイプの青木選手については、別の機会で触れたいと思います。

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