この投げ方は?

イチロー選手が今季からプレーしているマーリンズの若き右腕、カーター・キャップス投手が、今注目の的となっているのをご存知ですか?先日のブレーブス戦で8回に登板した際、軸足をツーステップのように前方に移動させながら投げていたからです。投手板から50cmほど前に移動しています。

カーター・キャップス

試合を中継したテレビ局の解説者も、「あれだけ前から投げたら打者は同じ球速でも5~7kmは速く感じるだろう。ルールでは規定していないのだから許されるのだろう」と苦笑しています。実際、投手板から約50cm前から投げていることになるその投球フォームは、メジャーでは事実上黙認されたことも話題となり、彼の動画もこの最近で数多くアップされた様です。

もし、日本の球場であの投げ方をする投手がいたら、ルール上、どう判断されるのでしょうか?
てなわけで、公認野球規則を調べてみました。該当しそうなポイントは2箇所あります。

【9・01】
審判員は本規則に明確に規定されていない事項に関しては、自己の裁量に基づいて裁定を下す権能が与えられているとあります。このことから、「正しいフォームでないのは明らか。反則投球!」とジャッジされる可能性があるというです。しかしながら、「どこが違反してるんだ!」との抗議をしてくることも予想されます。一連の投球動作の中で、軸足がフリーフット(左脚:自由な足)に引きずられているだけ」という主張が考えられるので、この項目だけを適用しても騒ぎは収まりそうにありません。ただし、スロー再生(0分48秒後あたり)を観ると、フリーフットが地面につく前に、明らかに軸足が前にずれてきていることが判ります。さらに、そのずれた軸足で地面を蹴ってからボールを投げていますので、投手板から投げていないと解釈が生まれそうです。そうなると、次の【2・38】を持ち出されそうな気がします。

【2・38】
イリーガルピッチ(反則投球)への可能性が考えられます。確かに「左脚を上げた」の段階では投手板には触れているものの、「左脚が地面に着いた」の時の軸足は投手板には触れていません。このことから投手が投手板に触れないで投げた打者への投球と判断ができるのですが、「投球動作開始時にプレートに付いていれば問題なし」というのが正確な解釈となるため、【2・38】のルールが適用できるかは難しいと考えます。

現時点では、ルール上の盲点を突いたと言われている、この変則投法を子供達がマネし始めたとしても、試合でお目に掛かれることは皆無だと思います。右足首に相当な負担を掛かることは何球か投げてみれば判るからです。身体を鍛えあげたプロの選手と言えど、長いイニングの投球に耐えられるかも疑問です。その一方で、この投げ方自体いつまで認められるのか、そちらに興味が向いてしまいます。もしもですよ、「この投げ方はOK!」なんていう事になったら、ベースボール(野球)の常識は変わるのでしょうね。

まぁ、ある意味注目です…

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