投手の交代

甲子園球場で行われた阪神タイガースvs.中日ドラゴンズの試合で、1度登場したリリーフカーが投手を乗せたままバックでブルペンに戻るという“珍事”が起きました。
1―1で迎えた8回、ドラゴンズの攻撃に映る際、タイガースのマウンドへは、前のイニング(7回)の途中から登板していた2番手・桑原謙太朗投手がそのまま上がりました。投球練習中に香田投手コーチがマウンドへ行くと、右翼後方にあるブルペンの扉が開き、助手席にサウスポーの高橋聡文投手を乗せたリリーフカーがグラウンドへ登場します。しかし、車がマウンド方向へ向かって動き出した直後に急ブレーキ。リリーフカーは、バックのままブルペンへ吸い込まれる様に戻っていきました。

戻る(戻される)事になったのには、理由があります。公認野球規則では、この様に記されています。

【公認野球規則5.10 『プレーヤーの交代』】 (旧3.05d)
(i)すでに試合に出場している投手がイニングの初めにファウルラインを越えてしまえば、その投手は、第1打者がアウトになるかあるいは一塁に達するまで、投球する義務がある。
ただし、その打者に代打者が出た場合、またはその投手が負傷または病気のために、投球が不可能になったと球審が認めた場合を除く
また、投手が塁上にいるとき、または投手の打席で前のイニングが終了して、投手がダッグアウトに戻らずにマウンドに向かった場合は、その投手は、準備投球のために投手板を踏まない限り、そのイニングの第1打者に投球する義務はない。

相手チームが代打を送っていない、このタイミングでの投手交代は認められないため、リリーフカーのUターンせざるを得ませんでした。その結局、高橋投手は1死一塁からリリーフカーに乗って”再登場”してマウンドに上がる事ができました。

学童野球でも、特別延長戦で投手の交代を迷った監督さんが、その投手の換え時を逸するという事が実際にありました。先発で投げ続けてきた投手も、その交代を知らされぬまま、マウンドで準備投球を始めてしまいました。そのルールを知らない監督さんは、最初驚いた顔を見せていましたが、審判の説明によりすぐに理解されたと記憶しています。

イニングの頭で投手交代が発生する場合、前のイニングまでマウンドに上がった投手がマウンドを通過して、元気良く別のポジションに付くケースがあります。攻守交代を急がせる立場としては、次の投手がいの一番でマウンドに向う事が理想です。イニングの頭から投手を交代するケースでは、前の投手が先にファウルラインを超えていないか、注視する必要がありますが、公式戦で困惑しない様、練習試合やOP戦などで見掛けた場合、監督さんへは口頭注意に留めておこうと思います。

ここで、軟式野球では2017年より、このルールに関する解釈に変更が加えられました。

【競技者必携 『連盟規定細則』】(28)投球の義務(5.10i関連)
すでに試合に出場している投手がイニングの初めにファウルラインを越えてしまえば」とあるのを「投球練習するために投手板に位置してしまえば」に読み替える。

担当する野球のカテゴリーによって、ルールの解釈が異なります。こちらについては、別の機会で触れたいと思います。

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