スカウトの決断力

今回は、日本ハム中島卓也選手を取り上げます。福岡工業高では1番ショートとして活躍し、2008年春の九州大会でエースの三嶋一輝投手(現横浜DeNA)らと共にチームを初優勝に導きました。高校時代は評価は高いとは言えず、調査書はわずか球団から届いただけでしたが、その1球団とは北海道日本ハムファイターズでした。2008年のプロ野球ドラフト会議で位指名を受けます。6年目の2014年、中島選手は前年の打率.238を.259に上げ、盗塁も23から28盗塁に増やし、フィールディングも定評がありセカンドのレギュラーを手中に納めました。彼を特集した番組はコチラです。

中島選手を発掘したのは、当時日本ハムで九州地区を担当していた岩井スカウトです。元々、三嶋投手と対戦相手である長崎・清峰高の今村猛投手(現広島カープ)の視察が目的だったそうです。「三嶋のシュートに詰まって、ショートゴロが7つも8つも飛ぶ。それを右に左にすばしっこく動いて、全部さばいてね。うまいなぁ……と思った。特に、スローイングが良かった。ガッて強く投げない。ソフトにスナップですっと投げられる。ヤクルトにいた宮本慎也がそうでしょ。ああいうショートがほんとにうまいんだ」と当時を振り返ります。その試合が終わり、岩井スカウトはすぐに席を立ちます。

「ちょっと、お母さん見てくる」

男の子の将来には、お母さんの特徴が出るというのは以前も触れました。

「科学的にどうなのかはわからないが、ここまでたくさんの人と出会ってきた経験則」として信じているそうで、その感想は「思った通り。体格がよくて明るくて、元気のよさそうなお母さん。本人がすぐそこで顔を洗ってたから、そばで比べたら、僕が175だから身長も176はあるな……」

加えて、「まだどこも狙ってない。僕の隠し玉だから」と同行した記者に微笑み、早速球団には「守備は間違いなし。守備だけなら3、4年で出てきます。バッティングは確かに非力だけど、悪い打ち方してるわけじゃない。筋トレとプロの食事でどうにでもなる。盗塁できるスピードと感性も持っている。パワーさえつけば、レギュラーになれる子ですよって。6、7年かかるかもしれませんけどってね」と報告したのだそうです。

高校の監督さえ、あまりの非力さに腰を引いたほどだった中島選手の高校時代。それでも、フィールディングなら高校ナンバーワンなのだから……、と口説いて日本ハム入りを実現させたスカウトのイメージ通りに、プロ年目で代走と守備固め中心に105試合出場を果たしました。そして年目の昨シーズン、セカンドしてレギュラーの座を獲得します。

最後に岩井スカウトの言葉が印象に残りました。
「ほかの世界は知りませんが、プロ野球で選手が成長していくのに特別な理由なんてありませんよ。練習すること、良い練習をしようとする心。それだけですよ。まぁ、もし中島に何かちょっと人と違うことがあったとすれば、あいつをなんとかしてやろうっていう空気を球団全体に作ったことかなぁ……。それにしても、あいつの日ごろの練習態度、生活態度がそういうムードを生んだってことなんですけどね」

プロを夢見る小学生選手達には、どんな練習メニューだろうと、意味は持たせられる選手になってほしいですね。学童レベルでは、やらされている練習ばかりでしょう。これが中学以降になれば、知識も豊富になり、その練習に意味があるかないかを自己判断できる様になるのでしょうか?練習する時間が誰も皆同じだとすれば、そんな判断力よりもどんな練習からでも何かを手に入れられる力が、その先大きな差になっていく気がします。

まぁ、拙の独り言なんですけどね…

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