補殺という言葉をご存知でしょうか?試合においてアウトが成立した場合、これに至る過程で、送球を行ったり、あるいは打球や送球の方向や速度を変えるなどしてそのアウト成立を補助すること、もしくはその野手に記録される守備記録を意味します。サッカーでいう、「アシスト」に似ています。
「捕殺と書かないの?」と聞かれそうですが、「アウトを捕る(とる)」のではなく「アウトを補う(おぎなう)」ことから「補」という字を用います。
では、補殺がアシストならば、直接アウトを奪った野手はどういう記録が付くのでしょうか? 打者や走者がアウトになった時には、触球や打球の捕球などにより直接アウトを奪った野手には刺殺が記録されます。
今回は、2回に分けて、捕殺となるプレーついて学んでみます。
「補殺」が記録されるケースは、次のようなプレーが起きた時です。代表例をいくつか記載してみます。
1. ショートがゴロを捕り、ファーストへ送球して打者がアウト
→ショートに補殺が記録されます
2.キャッチャーが二塁へ送球し、セカンドが盗塁を試みた一塁走者に触球(タッグ)してアウト →この捕手に補殺が記録されます
3.タッチアップが失敗した場合
(フライの捕球(外野手)を見て三塁走者が本塁に向かった時、外野手が本塁へ送球し捕手の触球によりアウトになった場合)
→飛球を捕球し送球した選手に補殺が記録されます
→中継プレーに参加した内野がいた場合は、フライを捕球し送球した選手と中継プレーに参加した選手の両方に補殺が記録されます
4.振り逃げが成立した後、キャッチャーが一塁へ送球し,打者走者がアウトとなった
→捕手に補殺が記録されます
チーム内で試合結果の集計に使用しているサイトでは、補殺や刺殺の入力や記録ができない仕組みになっているのですが、スコアブックではどの様にしてアウトにしたかという記録は必ず残しています。ここで、補殺の総計である補殺数に着目すると、各ポジション別に選手達の守備能力を比較することができます。当然の事ながら、攻撃の記録における打席や打率と一緒で、守備についたイニング数が多いほど補殺数が多くなる傾向にありますので、守備イニング数とセットで補殺数を比較しなければ、総合的な判断できません。
投手の場合:打球を処理する機会が少ないですが、補殺数が多ければバント処理などのフィールディングが良いと見ることができます
捕手の場合:おもにインフィールドのゴロの処理と盗塁阻止を足した数字となるため、補殺が多ければ、フィールディングがいいかまたは盗塁を阻止する能力に長けていると判断できます
内野手の場合:内野手の補殺は、ゴロを捕球して送球するという基本的なプレーに対して記録されることが多いので、守備範囲の広さをはじめとした総合的な守備能力をみることができます
外野手の場合:補殺はおもに内野返球により走者をアウトへ導く行為となりますが、外野手の補殺数は内野への正確な送球やその肩の強さに比例して増えない、という問題点があります。
理由は、一度その外野手が強肩を披露すると、相手走者はその外野手の送球能力(レーザービーム)を警戒し、余分な塁を奪いにいく姿勢に躊躇することが増えるからだと考えられています。そういう意味では、捕手も一緒ですよね? 近年では、「外野手が相手走者の余分な進塁を抑止したこと」を数値化する試みも行われているそうです。
それでは最後に、外野手における補殺の一例をご紹介します。学童野球でよくお目に掛かる「ライトゴロ」です。
守備位置の兼ね合いから、ライトへの飛球やゴロがアウトになりやすい傾向にあります。その一方で、プロ野球の世界では逆に珍しいプレーと言われています。
次回は、驚くべき補殺数を誇る内野手を紹介します…