先日ヘッドコーチから「試合球の補充」の依頼を受けまして、新たに2ダースをネットで注文したのですが、異なるメーカー品の激安商品に思わず目が向いてしまいます。そこで、今回は軟球の規格について呟いてみます。
試合で使うボール(試合球)は、どこのチームもそうでしょうが、基本的には同じメーカーのボールを使用します。各大会でも統一が図られ、川崎市宮前区では「ナガセケンコー」が指定メーカーとなっています。ケンコー(KENKO)ボールと言われている、あのメーカーです。しかし、練習球には試合球からのお下がりの他に、他メーカーのボールがそれなりに混ざります。理由は、連盟主催ではない冠大会で「ナガセケンコー」とは異なる別メーカーの使用を義務付けられるからです。2年前に出場したある大会は、「マルエス」の指定があり、大会直前に慌てて調達した記憶があります。先日もボール洗いをしている時に気が付いたのですが、メーカーによって柔らかさ(反発具合)が異なります。「マルエス」ボールの方が、少し柔らかい印象があります。どれだけ異なるのか、現在の規格を調べてみました。
すると…重さは3g(グラム)以内の違いですが、反発は実に20cm(センチ)と大きく幅があります。拙でさえ気が付けたのも頷ける違いです。ところで、全日本軟式野球連盟が公認しているボールメーカーは以下の4社です。これまで日本には6社の軟球メーカがありましたが、廃業と合併を経て現在では次の4社となります。
● ナガセケンコー
● トップボール(トップインターナショナル㈱。旧・国際ボール)
● 内外ゴム
● ダイワマルエス(マルS)
この社名を見て、ちょっと違和感を覚えました。ボールは野球用品にもかかわらず、ミズノ、ゼット、SSKといった大手スポーツメーカーの名前が一切ありません。
ましてや、ミズノ(MIZUNO)は日本プロ野球の統一球メーカーなのに、軟球は製造していないのです。野球の競技人口で言えば、軟式野球の方が硬式野球よりも多いはずですが、なぜミズノは軟球を作ろうとしないのでしょうか?理由は、軟球の特殊性にあると言われています。前述した軟球メーカー4社は、いずれも元々はゴムメーカーでした。軟球の原材料は生ゴムで、そこから様々な薬品を混ぜて製品に加工していくノウハウがゴムメーカーにはあるようです。そのため新規参入はままならず、軟球のメーカーは寡占状態にあります。
実際、 関西2社(ダイワマルエス、 ナイガイ) 関東2社(ケンコー、トップ)は同じ 金型を使用しているそうで、意匠は同じ4つのメーカーが2つの金型を使っています。 そして メーカーマークのみが違うと言うことになります。使用頻度の高い、「ナガセケンコー」ボールは軟式ボールの老舗と言ってもよく、シェアの半分以上を占めています。軟球の販売には、かなり地域性もあるようですね。
軟球の発祥は、アメリカではなく日本です。1916年(大正5年)に京都市の小学校の先生たちを中心に「京都少年野球研究会」が結成され、ゴム製野球ボールの研究開発と、それを用いたルール制定に取り組んだことがキッカケです。当時の軟球は、「ゴムマリ」とも呼ばれ、1918年神戸市の東神ゴム工業株式会社が試作ボール第1号が完成します。
2006年の新規意匠登録で、全日本軟式野球連盟の公認球がこの4社で共同開発され、現行球として認定されることになります。これは意匠登録が切れると台湾、中国製が公認される恐れがあったためとも飛距離アップが理由とも言われています。1951年に全日本軟式野球連盟が設立されて以来、55年振りの大幅変更となりました。どう異なるのか? 以前の軟式ボールは、硬式ボールを模した縫い目模様とディンプル(ゴルフボールのようなデコボコ)が付いたデザインでした。確かに昔触っていたボールのデザインと一緒です。
これが、改良された軟式ボールです。ディンプルがなくなった代わりに、細かい点で描かれた三角模様が特徴的です。以前の軟球では、バウンドした時に弾み過ぎだったそうで、2バウンド以降は高く跳ねないようにすること、また直球はより伸びるように、変化球はより曲がるように改良されたのだとか。言い方を換えると、硬球に近い性能が軟球に施されたのだと言えます。
そう言えば、拙が少年の頃、自宅にはC球とL球(L号)がありました。
このL号という規格は、1985年(昭和60年)に廃止され、成人用はA号に変更されていたのです。これに軟式野球(学童野球)の歩みが加わると、夏休みの自由研究の題材に充分なり得ると感じ始めました。
まぁ、拙の独り言なんですけどね…